Spear.

「小説家になろう」および「カクヨム」で連載中「幻想再帰のアリュージョニスト」(作者:最近さま)をイメージ源にした7曲入アルバムで、準備稿として2019年8月「アルトノイラント・イン・カレイドスピア」を作成、これを2019年12月に拡張したものが本作です。
現在入手方法なし、再編集準備中。

01 【間世界通信が繋がるまで今しばらくお待ちくださいませ】
02【春色カレイドスコープ】(Off Vocal)
03 【シナモリ・アキラ】
04 【冬色モジュール】着信音ver
05 【この夜が明けるまであと百万の祈り】
06【春色カレイドスコープ】
07 【アズーリア・ヘレゼクシュ】

よくある転生もの……と思わせて転生先はあらゆるものが呪術で解決するオカルトパンク世界、転生者シナモリ・アキラもまたサイバーパンク世界から転生保険をつかってこの世界にやってきた人間、と一筋縄でいかない筋書に魅せられました。本作は3章までの展開に基づいています。

01【間世界通信が繋がるまで今しばらくお待ちくださいませ】

転生事故をシナモリ・アキラが保険会社に連絡したときこんなキャッチが流れてたんじゃないかなと想像した曲です。

02【春色カレイドスコープ】(Off Vocal)

「ミディアムテンポのバラッドで、歌詞は情熱的な恋をステージへの挑戦になぞらえたものだ。落ち着いた楽想から情熱的なクライマックスへと向かう劇的な曲調」(4-48 カクリ世の宴)とあります。シナモリ・アキラの認識によると恋の歌です。葬送式典で発表された新曲ですので、アズーリアとハルベルトどちらが作詞した可能性もあり、アズが書いた恋の曲を歌う(歌わされる)ハルというのも面白い構図ではあるのですが、自分はハルベルトが書いたと解釈しています。具体的な歌詞は6トラック目をご覧ください。

この曲ずばりの心情が本編にあります。
 何せ、次なる一幕で登場する『真打ち』は、自分よりも遙かに荒々しく、 そしてなにより無遠慮だ。
 負けてられない。うかうかしていたら『掻っ攫われる』に違いない。
 何を、なんて、もちろん言うまでもない。
 歌姫は一番大切なものを奪われない為に、己の戦いを始めた。
(3-30 その名はサイバーカラテ)

シナモリ・アキラはそれを知らずに恋の方が主題と思ったのだと考えています。この心情をベースに、鈍感使い魔に向けた感情と、向けられている感情と、末妹の座争いと、それらを仮託された恋の歌の四重にとれる歌詞にしました。迂遠なのはハルベルト流の照れ隠しなんでしょう。葬送式典発表で遠くにいった人を思う要素がないとも思えないのでこんな歌詞になってます。猫の国語翻訳ですが。春は末妹候補四人のうちトリシューラを表す杖的な季節ですので用語も「物体」にフィーチャーしてます、少し。この曲が収録されているアルバム名『Spear』から本アルバム名もいただいています。参照原典としてショパンのバラード4番をもっていますが、意識的に残した【この夜が明けるまで百万の祈り】と違い原型をとどめてません。

03【シナモリ・アキラ】

主人公シナモリ・アキラのイメージ曲。サイバーカラテ、金属打音、E-Eの抑制感をイメージ。もう一人の主人公【アズーリア・ヘレゼクシュ】と横の構成を一にし縦の編曲が差をもたらす、という仕掛けになっています。

04【冬色モジュール】着信音ver

歌姫Spearの曲、走り出す軽快なメロディーとのこと。2-20でシナモリ・アキラがコルセスカからの着信を受けた曲です。

05【この夜が明けるまであと百万の祈り】

頌歌 【この夜が明けるまであと百万の祈り】には作中度々言及があります。これを解釈し曲にしたものです。
まず「【エスニック・ポリフォニー】が奏でる【非エスニック・ポリフォニー】」(3-30 その名はサイバーカラテ)とあります。大前提として、本曲は【エスニック・ポリフォニー】の一部を使い、そのうえでアレンジでエスニック性を破ったものである必要があります。

エスニック性はリズムや音律(スタンダードな頭韻四拍子リズムや教会旋法.的な音律を外したところ)、あるいはある種の素朴さに現れるものですが、「【エスニック・ポリフォニー】が奏でる」以上音律はアレンジであまり変えるわけにはいきません。したがって逆算的に【エスニック・ポリフォニー】はリズムやある種の素朴さの部分にエスニック性を持っている-少なくとも-ということになります。

歌詞は「ただの事実や古典的なフレーズを繋ぎ合わせた摸倣と寄せ集めの言葉」(3-32 澄明なる青空に)とあり、歌詞は古典的なフレーズを必要とします。

そして作中明確な言及はないですが、過去の頌歌の母体ですから、対称性からいって歌詞同様にメロディ母体であるエスニックポリフォニーも参照的な原典を持っていると考えるのが自然に思えます。
【この夜が明けるまであと百万の祈り】は、作中山場に流れる音楽であるため、交響曲風の要素があるだろうと想像されます。破ることができるエスニック性は素朴感でしょう。

「風変わりな多声音楽エスニックポリフォニー」(3-30 その名はサイバーカラテ)とあるので、素朴といってもポリフォニックなアレンジに耐えるには、ある程度強固なリズム基盤を持っていると思うので、ンッタッタ…的な舞曲だとおもいます。【エスニック・ポリフォニー】は3拍子舞曲風にとらえることが決まります。

形式ですが「最後にして最長の、定型を大きく外れた」(3-32 澄明なる青空に)ともあります。単にアイドル曲としての破格だけでなく、交響曲の破格であるベートーヴェンの第九に倣い合唱を導入しましょう。

綜合して3拍子舞曲風クラシック曲、これをSpear/カタルマリーナ風の歌にアレンジしてそこからさらに交響曲風アレンジをする、という過程を踏んでできたのが本曲です。原典にはショパンのマズルカ作品番号59番を選びました(C96発表時のエスニック・ポリフォニーを破棄して作り直したのは以上のような考察の深化によるものです)。

06【春色カレイドスコープ】

おはよう リハは十分 流れは残らず 覚えてる
控室のなか 君を見つめていた

ライバル同士だけど 見てもらいたい君だけに
ステージの一番前も 君の気持ちも 譲る気ないの

カレイドスコープ 上演一分前
奈落の足場にヒールをかけて頷き合う
せりあがる舞台へ 少し震えるあなたの瞳に
映る景色 今私だけに 春色

さよならレッスンのあとは お互いダメ出しばかりして
でも言おう今日だけは どれほど好きだったか

そのステップその飛び方 みてるのが幸せだった
ふたりでたつステージ 最後は私も負けないから

カレイドスコープ 通し稽古進む
次のステージにはばたくあなた 追いかけるよ
やさしい言葉は 今まだとどかないけど
いつかまたとなりに立たせて そのときは 春色

ふるえながら 闇のなかへと
ふみだして とどかない声 ひびかせ
はるかなあなたへ君へ

季節は 巡り 一人きりの春
君の背中まだ見えるから ここでまだ歌うよ
夜空に燃える太陽 青空に輝く月星
その笑顔抱きしめて越えていこう春色

07【アズーリア・ヘレゼクシュ】

もう一人の主人公アズーリア・ヘレゼクシュをイメージした曲。まっすぐさをピアノソロで表現すると決めて作りました。ペダルを極力抑えたパートが中間にあり、その収録に成功したときピアノ演奏の音響演出のステージを一段登れたように思います。

All music and lyrics written by Hiroyo ,2019.


CD仕様
ケース=ソフト
ブックレット=1c 4p
CDレーベル=フルカラー(ブラックの4色分解風表現)