〔2024.08発表,CD,全6曲〕
収録曲
- 01 Going on, the next series ※
- 02 Blue Tint (Red Tintより)
- 03 Atlach=nacha ~ Adoption ~ ※
- 04 Ordinary World (Worldより)
- 05 Throwing into the banquet
- 06 Going on, the water’s edge. ※
※は本Webサイト含む発表済みの曲です。アルバムとしてのマスタリングやストーリーにあわせたタイトル調整等をしています。
本作は1997年発売のPC向けアドベンチャーゲーム「アトラク=ナクア」(アリスソフト)をイメージ源、とりわけ後日談小説「系譜」のifバージョンを文章とアレンジ曲で表現したCDであると理解いただいて概ね間違いありません。原作ゲームは暴力と無理解に傷つけられた少女「深山奏子」と、それを気まぐれに助けた女郎蜘蛛の妖怪「比良坂初音」の心の交流とすれ違いを横糸に、妖怪がなぜ気まぐれを起こしたのかの因縁を縦糸に、決して大きくないボリュームながら丁寧に織ったような物語でした。そして後日談は、本編で諸々あって滅んだ「比良坂初音」の子「深山初音」が中学生になったころの物語です。子を託された「深山奏子」は人の世では母親として扱われているのですが彼女は正気を失っており……
アトラク=ナクアにはたくさんの思い出と感謝があるのですが、1つあげるとすれば自分を作・編曲に導いてくれた作品だということです。
Shade さんの曲を弾きたいと思ってピアノを再び練習するようになったし、それが縁で同人ピアノアレンジを漁るようになり「アトラク=ナクア幻想曲」と出会い、作・編曲の師であるK.Kuroya との縁ができました。師との一つの集大成はEMBRYO PIANO WORKSがあり、作編曲面での共同作業として「照準の先に光はあるか」はありつつも、いつか自分の音楽で「アトラク=ナクア」を総括したいという思いもまたありました。ゲームで見事に締めくくられたアトラク=ナクアという作品をそのまま総括したのがK.Kuroyaの「アトラク=ナクア幻想曲」なら、自分はアトラク=ナクアという作品の棘のような後味「系譜」の総括を自分自身の音楽によって成し遂げよう、というのが本作「海へ行くわよ、奏子」です。その流れを編むにあたっては、子供としてきわめて厳しい状況に置かれた深山初音を何をすれば幸せにできるのか、今であれば取り除ける苦しみはないか、それを探すことを目標に決めて制作しました。
そして彼女の幸せとは何かを考えるにあたり、原作はいわゆる百合ゲーの嚆矢として語られることが多いように思いますが、私は「男性側メディアで、男性性の被害者となった女性の苦悶や怒りを正面から描いたこと」のエポックさをよく見ないといけないかなあ、と思っています。それが作品の正しい受け止め方かはわかりませんが、少なくともその視点をもつと「被害者を脱するために加害者側に回ったことが連鎖を生み出すこと」=「咎」という原作の重要なキーワードがより際立つように思います。
ごく小品ではありますが、その視座を意識し表現できるようになった部分に、自分の四半世紀を込められたと思います。Web公開済み作品の再録と新作とが半々ですが、収録曲もまた1はピアノ中心の作風から別の楽器を取り入れるのがある程度安定して型になった頃、6は不定リズムの揺れを取り込んだ作編曲について一つの区切りまで到達した自分にとっての記念碑的な作品です。
原作スタッフ様、アリスソフト様、制作機会となったオンリーイベントArachnid=Nemesis の主催様、制作時間を捻出することを許してくれた家族、手に取ってくれた皆様に感謝し、このページは締めたいと思います。
Boothで販売中。頒布価格500円です。本作はアリスソフト著作権ガイドラインに沿い、頒布経路は同人イベント、同人アイテムを取り扱うショップ委託限定、ストリーミング配信・DL販売は禁止のためCD実品のみとなります。試聴が気に入ったら、ご購入お願いします。
https://altneuland.booth.pm/items/6039133
CD仕様
ケース=スリムケース
ブックレット=1c 8p
CDレーベル=フルカラー